ラフsss
「あなたの笑顔」


あれは、一世一代のプロポーズを彼がしてくれた時だった。
言葉そのものは、とてもシンプルで、『結婚しよう』というものだったが
雪は、感動のあまり、咄嗟に返事が出来ず大粒の涙を流したのだった。

はい、と小さく頷いた雪は、照れて笑う古代の幸せそうな笑顔が忘れられない。

男の人に使う形容ではないが、美しい、と心の底から思った。
そしてその感情は、以前にも深く心に刻んだものと似たものだった。

自分が奇跡的に息を吹き返した時の、彼の顔――。
愛し、愛されるとはきっとこの感情なのだと、言葉に乗せずとも雪は直感で感じていた。

雪はあの時の古代と、プロポーズを受けた時、心から安堵して笑った古代、どちらの彼も、きっと永遠に忘れないだろうと思っていた。


「ねえ、古代君」

となりで寝ている彼を呼ぶと、「ん?」とかすれ気味の低い声が返ってくる。


「どうした? 寝られない? それとも、もう一度……」

彼は、半身を起こし、前髪を後ろへ撫でつけて、小さく丸まっている雪の肩を抱き寄せる。

「やだ、違うの。私はただ、」
雪は、自分の身を抱きしめるように、両手でしっかりと胸を隠した。
ブランケットの中でもそもそと動く雪の後を追って、古代の手が、彼女の心と体を同時に解きほぐそうと動き始める。

甘い攻防が続く。




「言いたいことは、何?」


「訊きたいことがあるんだろ?」


それは二人が同時に発した言葉だった。

吐息に埋もれて、言葉が掻き消される前に。

もう一度、あなたの笑顔が見たい。知りたいの。

本当に知りたいのは、ね。


言葉は喉元に留まってしまう。吐き出される前に消えてしまった。

なぜなら、彼が雪の言葉を遮るかのように、彼女の首や、耳元や、頬や、彼女の全てにキスを落として行ったから。

「毎朝、雪のモーニングコーヒーが飲みたい。俺はそれだけで幸せだ」

あらゆる場所に、丹念に唇を落として行く古代は、キスの間にいつもの彼とは別人のような台詞も落として行く。

――ワタシはね。

ただ、あなたの本当の笑顔が見たい。それだけなんだ。


「私は、今日買ったペアのコーヒーカップを明日使いたいなと思ったの」
そうしたら、彼の笑顔が見られると、雪は信じている。

けれど、一番に伝えたい肝心な言葉が消えてしまっている。


『私もヤマトの仲間よ』

彼が忘れているはずはない。私も同じ苦しみを知っているんだよ。
こんな当たり前の事を、今また伝えなければならない気がしているのは、彼がどこか自分を遠ざけたがっているのではないかと危惧しているからだ。







つづく?




小説を読んで、3章を見て。

ちょっくら書いてみたくなりました。
続きます。たぶん。
のんびり書くので、のんびりお待ちください~~。


2017/10/17(火) 17:33 ヤマトSSS PERMALINK